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徒然草のように

個人ブログです。

【書評】 人としてのありかたを教えてくれる葉室麟の「蜩の記」23年下期の直木賞受賞作

書評 直木賞
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映画化もされた葉室麟直木賞受賞作品です。

この「蜩の記」を読む前までは、時代小説作家としての葉室麟さんの作品を読んだことはありませんでした。

不始末を犯して元奉行の切腹を見届けるという役を申し付かった壇野庄三郎が、監視することとなった戸田秋谷と接していくうちに、その人柄や生きざまに惹かれていく姿に感動を覚えました。

無実の罪を着せられて職を追われながらも、一言の弁明をすることもなく、命じられた藩の家譜「蜩の記」を粛々と執筆していくその姿勢には人としての大切なことを周りの人に伝えていきます。

秋谷の家族たちも父を信じ支えていきます。

秋谷の無実を信じて家老へ息子と共に談判に行きますが、聞き遂げられることはなく、切腹の刻限は刻々と迫ってくるのです。

次第に明かされる冤罪事件の真相。

葉室麟さんの時代小説を初めて読んだのですが、非常に読みやすく端正な文体で、悲劇的な結末を迎える話を、丹念に登場する人々の心情を追いながら読むことができました。

このような人物が身の回りにいたならばと思いながら、主役の庄三郎の目線から鮮やかに人としての生きざまを教えてくれました。

人の世の中のしがらみ、藩の事情など個人ではどうしようもできない罪を着せられて尚、このように人に感銘を与えて生きる道があるのだと感動しました。

蜩の記はさすがに直木賞の受賞作だと感じられる作品でした。